税金と会計処理

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個人の場合

  【株価指数先物取引の税金】

  1. 通常、12/31までに決済された取引が対象となり、決済日が翌年の取引及び未決済の建玉は翌年の対象になります。
  2. 申告分離課税となります。他の所得とは分離して年間利益の20%(内訳:所得税15%、住民税5%)が課税されます。
  3. 2013~2037年の間、復興特別所得税がかかります。先物の譲渡所得に対し、所得税は15%ですので、その2.1%つまり、先物の譲渡所得に対しては0.315%の税率です。
  4. 特定口座の対象外なので、証券会社では源泉徴収はしてもらえず、確定申告が必要となります。
  5. 支払調書は証券会社により、税務署に対して発行されます。
  6. 損益通算は商品先物、国債先物、株価指数先物、くりっく365、くりっく株365、上場カバードワラント、それらのオプション取引及び外国為替証拠金取引(FX)や金・原油等の店頭デリバティブと可能です。株式、投資信託との売買損益は通算できません。
  7. 株式のように事業所得(株式売買を事業として継続的に行っている場合)の認定は受けられません(経費を広く認めてもらえない)。
  8. 損失の繰越は1年間に生じた損失の額のうち、その年に控除しきれない金額については、翌年以降3年間にわたり、繰越控除できます。繰越控除は申告が必要で、たとえ売買していない年があっても、繰越損が解消できていないことの証明のため、申告が必要です。
  9. 投資顧問料は経費として認められますので、領収書を年明けにご登録住所へ郵送致します。


  【扶養家族の方が年130万円以上の利益が発生した場合】

主に主婦のお客さまが対象となると思われますが、年間130万円(60歳以上か障害者の方は180万円)以上の収入が発生した場合、扶養家族の基準から外れてしまいます。その場合概算で幾ら位の負担増になるかということですが、一般論で説明するとやや難解なので、具体例で説明していきます。本人のパートの所得が100万円に、本人の先物の所得が500万円となった場合を仮定します(復興特別所得税は加味していません)。

  1. 配偶者控除
  2. 先物の所得は分離課税ですので、総合課税の対象外となり、総合課税の対象はパートの所得の100万円のみなので、給与所得控除65万円を差し引くと35万円が給与所得となり、配偶者控除の38万円以下なので、配偶者控除及び配偶者特別控除は適用されます。
    一方、先物の所得は500万円ですが、システム運用投資顧問の顧問料36万円(1年分)を差し引いた464万円に対し20%の分離課税ですので、92.8万円となります。

  3. 国民年金
  4. 本人の年収はパートの所得の100万円と顧問料を引いた先物の所得464万円の合計で564万円となり、扶養家族の基準から外れてしまい、国民年金の支払い義務が発生します。国民年金の保険料(2010年現在)は月額15,100円ですので、年間に換算すれば、181,200円(前納一括だと177,980円)です。尚、世帯主が厚生年金や共済年金でない場合は、本人も元から国民年金を払っているので負担増にはなりません。

  5. 国民健康保険税(料)
  6. 健康保険の扶養家族の基準も国民年金と同じです。よって、国民健康保険税(自治体によって税の場合と料の場合がある)の支払い義務も発生します。国民健康保険税は国民年金と違い全国一律ではありません。各自治体及び年度によって、税額が異なります(各自治体の計算方法はその自治体のホームページをご覧ください)。一般に財政事情が苦しい自治体程、税額は高くなる傾向があります。更に、内訳が医療、介護、後期高齢者支援の3つの項目に分かれていて、それぞれに所得割、資産割、均等割、平等割という計算方法があり、かなり複雑な制度となっています。

    システム運用投資顧問のある松戸市の例で上記ケースを計算します。まず、総所得金額ですが、パートの所得100万円から給与所得控除65万円を差し引くと35万円、顧問料を引いた先物の所得464万円を合計すると499万円です。そこから基礎控除33万円を引くと466万円となります。

    医療の項目は所得割が7.52%、均等割が1人19500円、平等割が18000円、資産割が0円なので以下のようになります。

       医療:466万円 X 7.52% + 19500円 +18000円 = 387,930円(10円未満切捨)

    支援の項目は所得割が2.24%、均等割が1人6000円、平等割が0円、資産割が0円なので以下のようになります。

       支援:466万円 X 2.24% + 6000円 = 110,380円(10円未満切捨)

    介護の項目は所得割が1.61%、均等割が1人12900円、平等割が0円、資産割が0円なので以下のようになります。

       介護:466万円 X 1.61% + 12900円 = 87,920円(10円未満切捨)

    各自治体とも限度額が設定されていて、概ね医療が53万円、支援が13万円、介護が10万円のようです。介護は40~64歳の被保険者のみが負担します。

    40~64歳の場合ですと、先物の所得500万円に対して、顧問料と20%の税金を引いた金額が371.2万円で、そこから更に年金や健康保険を引きパートの所得100万円を足すと395.5万円位になってしまいます。年金は後で還って来るので必ずしもマイナスではないし、松戸市はかなり健康保険が高い方とのことですが、それにしても約95.5万円コストは馬鹿になりませんね。

    松戸市の場合ですが、他の先物の所得金額の場合も試算しましたので、参考にしてください。
    先物所得パートの所得顧問料先物の税金年金医療支援介護健康保険の合計手取り(単位:万円)
    10010036 12.818.1 7.7 2.1 2.412.1120.9
    20010036 32.818.115.2 4.3 4.023.5189.6
    30010036 52.818.122.8 6.6 5.634.9258.2
    40010036 72.818.130.3 8.8 7.246.3326.8
    50010036 92.818.137.811.0 8.857.6395.5
    60010036112.818.145.313.010.068.3464.8
    70010036132.818.152.813.010.075.8537.2
    80010036152.818.153.013.010.076.0617.1
    90010036172.818.153.013.010.076.0697.1
    100010036192.818.153.013.010.076.0777.1

    余談ですが、健康保険の請求は世帯主に行きます。しかし、その支払いが配偶者の分であれば、配偶者の税控除(パートの所得等に対して控除可)に使えます。但しそれは総合課税の場合で、先物の利益については、申告分離課税なので国民健康保険税(料)で税金を安くすることはできません。


法人の場合

  【株価指数先物取引の税金】

  1. 利益になれば、先物利益として益金算入、損失になれば、先物損失として損金算入されます。
  2. 投資顧問料は経費として認められますので、領収書を貴社の決算月明けにご登録住所へ郵送致します。

  【株価指数先物取引の会計処理】

  1. 通常、損益計算書の項目では営業外損益の項目となります。
  2. 投資顧問を利用しての売買はヘッジ目的ではありませんので、ヘッジ会計は適用しません。
  3. 証券会社への入金時の会計処理
  4.          ( 借 方 )      ( 貸 方 )   
          K証券預け金    1000M銀行普通預金1000


  5. 取引開始時と追加証拠金差入時の会計処理
  6.          ( 借 方 )      ( 貸 方 )   
          先物取引差入証拠金1000K証券預け金1000


  7. 期中返済時の会計処理
  8. 利益:     ( 借 方 )      ( 貸 方 )   
    K証券預け金    1050先物取引差入証拠金1000
    先物利益      50


    損失:     ( 借 方 )      ( 貸 方 )   
    K証券預け金     950先物取引差入証拠金1000
    先物損失      50


  9. 決算時の会計処理
  10. 評価益:     ( 借 方 )      ( 貸 方 )   
         先物取引差金    100先物利益      100


    評価損:     ( 借 方 )      ( 貸 方 )   
         先物損失      100先物取引差金    100


  11. 決算期経過後の決済時の会計処理
  12. 利益>100:   ( 借 方 )      ( 貸 方 )   
    K証券預け金    1150先物取引差入証拠金1000
    先物取引差金    100
    先物利益      50
                  *先物利益は100+50=150

    利益<100:   ( 借 方 )      ( 貸 方 )   
    K証券預け金    1050先物取引差入証拠金1000
    先物利益      50先物取引差金    100
                  *先物利益は100-50=50

    損失>100:   ( 借 方 )      ( 貸 方 )   
    K証券預け金     850先物取引差入証拠金1000
    先物取引差金    100
    先物損失      50
                  *先物損失は100+50=150

    損失<100:   ( 借 方 )      ( 貸 方 )   
    K証券預け金     950先物取引差入証拠金1000
    先物取引差金    100先物損失      50
                  *先物損失は100-50=50

  13. 取引を終了し、銀行への入金時の会計処理
  14.          ( 借 方 )      ( 貸 方 )   
          M銀行普通預金  1000K証券預け金    1000


個人と法人、どちらが得か?

中小企業のオーナーにとって、先物取引を行う場合、「個人と法人、どちらが得か?」という命題はかなり重要です。 そこで、あくまでも一般論ですが、どちらが得かの判断材料をご提供致します。

  【国税】

まず、復興特別税ですが、個人・法人ともに税額の2.1%となっています。

個人の場合、申告分離課税の内15%部分が国税です。法人の場合、法人税、地方法人税、特別法人事業税が国税ですが、 法人税についてみると、一般的なケースとして普通法人の場合、 資本金が1億円以下の場合は15%、1億円超の場合は23.20%となっています。 更に、利益が年800万円超の部分については23.20%となっています。

従って、法人税のみで税率の低い場合でも個人と同じですので、国税に関しては個人の方が有利です。


  【地方税】

個人の場合、申告分離課税の内5%部分が地方税です。

法人の場合、少し複雑なので東京都のケースですが、以下の表をご参照ください。

税区分 都道府県民税市町村民税
法人住民税法人税割 法人税割
均等割 均等割
法人事業税所得割 なし
付加価値割
資本割

「XX割」という課税方式は外形標準課税と言われ、 法人税割と所得割以外は利益の有無に関わらず課税されます。 考え方としては一定の行政サービスを受けているので、 規模に応じてそのサービスの対価を払う義務が生じるというものです。

さて、法人住民税の法人税割について調べると都道府県民税が3.2%、市町村民税が9.7%となっています。 合計で12.9%の税率になります。 これは法人税額に対しての税率なので、過大なものではありません。 ですが、利益に対し法人税が15%の場合は約2%、23.20%の場合は約3%となります。 更に、法人事業税の所得割は軽減税率適用法人で最も税率が低い法人でも課税標準額に対し3.5%課税されます。 つまり最も税率が低い法人でも法人住民税の法人税割と法人事業税の所得割で約5.5%という税率となり、 外形標準課税の税額を調べる必要もなく、個人の税率を超えています。

従って、地方税に関しても個人の方が有利です。


  【繰越損失】

個人の場合、繰越損失は3年しか認められません。 法人の場合、10年です。 従って、繰越損失に関しては法人の方が圧倒的に有利です。


  【経費】

個人の場合、投資顧問料の様な直接の因果関係がある経費以外は、基本認められません。 法人の場合、かなり広範囲に認められます。従って、経費に関しては法人の方がかなり有利です。


  【手間】

個人の場合、確定申告が必要ですが、手間としてはそれだけです。

法人の場合、まず、定款の変更が必要です。 恐らく99.9%の法人は定款に「先物取引を行うことがある」とは記述していないと思います。 本来の業務に無関係の先物取引については、はっきりと定款に記述していないと、 損失が発生した場合に株主代表訴訟を起こされるリスクが存在します。

次に、上記会計処理が必要で弊店の場合、年間30回位の売買がありますので、 この記帳の手間は馬鹿になりません。

従って、手間に関しては個人の方が有利です。


  【結論】

法人に大きな累積損失がある、若しくは恒常的に赤字の場合は、法人。 それ以外の場合は個人の方が有利と思われます。

これはあくまでも一般論ですので、例えば地方法人税率等は自治体によって差異がありますし、 業種によっては租税特別措置法による軽減税率があるかもしれません。 従って、税理士または会計士とよくご相談の上、決めて下さい。



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