マネー・マネジメントはお客さまにとって極めて重要です。人によってはシステムの良 し悪しより重要だと説く方もいらっしゃいます。そこで、投資資金に対しどの位の建玉を すればよいかという点について、参考データをご提示いたします。
ここでの必要証拠金とは証券会社に積んでおく最低証拠金のことではありません。取引 をして行く上で、評価損が発生することは避けられないことですが、最低証拠金しか積ん でいないのであれば、多少の評価損でも追加証拠金を求められることとなり、追加証拠金 を差し入れ出来なければ、建玉を強制的に処分されることもあります。従って、証拠金は 余裕を持った金額を積んでおくことが必要です。では、どのくらい積んでおけばいいのか というのが必要証拠金です。まず、最低証拠金の計算例を示します。
HS-VaR方式証拠金(買い2024/6限):2,107,796円(2024/4/30)HS-VaR方式証拠金は株式会社日本証券クリアリング 機構が毎営業日末に公表し、その日のナイトセッションから適用されます。証拠金に ついて詳しくは取引証拠金をご覧ください。証拠金の基本的 な性質は価格水準が高い程大きくなり、また変動率が大きい程大きな数値となります。つ まり評価損が発生していなくても、証拠金額が大きくなれば、追加証拠金が必要になる場 合もある訳です。HS-VaR方式は2023/11/6よりですので、まだ暴落を経験しておりません。 ただ、HS-VaR方式とSPAN方式では極端な違いはないとのことですので、SPAN方式(プライス ・スキャンレンジ)の話で恐縮ですが、東日本大震災とリーマン・ショックを例として挙げ ます。震災時では、まず、掛け目を1.0から1.4に引き上げた証券会社がありました。また、 プライス・スキャンレンジも2011/03/25まで27万円だったのが、3/28からは99万円になっ ていました。リーマン・ショック時ではプライス・スキャンレンジは120万円でした。当時 の日経平均の水準は8000~9000円位でした。そこから計算し、且つHS-VaR方式とSPAN方式 では極端な違いはないという前提に立つと、証拠金は以下の金額を用意しておけば、大体 大丈夫ではないでしょうか。
日経225先物の価格 X 150
一方で、評価損についての備えも必要ですので、こちらは最大損失を用いて計算します。 システム運用投資顧問のシステムは想定元本を約1000万円として計算していますので、最 大損失(-1,179,992円)は約11.8%(端数は四捨五入)と考えられます。これによる備えは以 下の金額となります。
日経225先物の価格 X 118
よって、この2つを足した以下の数値が余裕を持った1枚当りの必要証拠金と考えます。 これはリーマン・ショックのような高ボラティリティ時に最大損失を被ったという想定で す。
日経225先物の価格 X 268
例えば、投資資金が3000万円で、日経225先物の価格が38,000円だとすると、
3000万円 ÷ (38,000円 X 268) = 2.95枚
ということで、2.95枚建てられることになります。但し、この数値は最悪の場合を想定 した余裕を持った数値ですので、資金効率はよくありません。更に、システム運用投資顧 問のシステムはリーマン・ショックの暴落時のようなボラ ティリティが高い相場において、高いパフォーマンスを上げる強い傾向がありますの で、システムの能力を加味した効率を考えるのならば、以下のオプティマルfをお読みくだ さい。
オプティマルfとは、マネー・マネジメントに立脚し、システムの能力を最大限に引き 出す最適な投資比率を計算するための手法です。具体的な計算方法は長くなりますので、 ここでは割愛させていただきます。詳しく知りたいお客さまはラルフ・ビンス著「投資家のためのマネー・マネジメント」をお読みください。 これによる最適投資比率は以下のようになります。
投資資金 ÷ (最大損失 ÷ オプティマルf)
ここで、システム運用投資顧問のシステムは売買代金が約1000万円(日経225先物の価 格で10,000円)になるように調整して計算してありますので、それを上記式に当てはめます と、
投資資金 ÷ (最大損失 X (日経225先物の価格 ÷ 10000円) ÷ オプティマルf)
システム運用投資顧問のシステムの2024/5/1時点の最大損失は1,179,992円、システ ム運用投資顧問のシステムのオプティマルfは0.8001ですので、それを上記式に代入します と、
投資資金 ÷ (1,179,992円 X (日経225先物の価格 ÷ 10000円) ÷ 0.8001)例えば、投資資金が3000万円で、日経225先物の価格が38000円だとすると、
3000万円 ÷ 38,000円 X 0.00678 = 5.35枚
ということで、約5枚建てられることになります。ただ、オプティマルfは資金の幾何的 成長を最大化しますので、ドローダウン発生時にも作用する両刃の剣となり、レバレッジのかけ過ぎは破産の確率を急激に高めます。そこで、 最大損失時にどの位の評価損が発生するかを上記の例にならって投資資金が3000万円のと きを計算します。まず、想定元本を計算し、それに対し最大損失時の評価損率は11.80%( 弊店の場合、投資資金を約1000万円にしていますので、最大損が1,17,992円ならば同損率 は11.80%)ですので、それを掛ければ算出出来ます。
38,000円 X1,000 X 5枚 X11.80 / 100 = -22,420,000円
-22,420,000円は投資資金3000万円の約75%に相当します。これでは再起不能 の評価損と考えてよいでしょう。このようにオプティマルfは両刃の剣ですので、弊店としては推奨しかねます。では、 何故ご紹介したかと言えば、こういう考え方もあるということと、オプティマルf自体ある 程度知られていること、更にこれ以上のリスクを取ってはいけない上限 を示しているとも考えられます。ですが、一発で投資資金の75%を失いかねないような過 大なリスクは負うべきではありません。では、次にこの点を踏まえて、リスクをどの程度 までとればよいのかを考えます。
人はそれぞれリスク許容度が違います。リスク許容度を超えない範囲で投資をするのが 投資の鉄則ですので、リスク許容度の範囲内で何枚まで建玉可能なのかは以下の計算式で 算出されます。
投資資金 X リスク許容度 ÷ 最大損失
この場合、リスク許容度とは投資資金が何%まで減るのを我慢できるかという数値で考 えます。ここで、システム運用投資顧問のシステムは売買代金が約1000万円(日経225先物 の価格で20,000円なら0.5枚)になるように調整して計算してありますので、それを上記式 に当てはめますと、
投資資金 X リスク許容度 ÷ (最大損失 X 日経225先物の価格 ÷ 10000円)
例えば、投資資金が3000万円で、日経225先物の価格が38000円、リスク許容度を30%( 損失を最大900万円まで許容するということ)、最大損失1,179,992円ですと、
3000万円 X 30% ÷ (1,179,992円 X 38,000円 ÷ 10000円) = 2.01枚
ということで、2枚建てられることになります。
リスク許容度を気にしていたら、あまり儲からないと思うお客さまもいらっしゃると 思いますが、僅かなレバレッジでも非常に大きな効果 があることをデータでご提示しましょう。その前にレバレッジは以下の計算式で算出され ます。
想定元本 ÷ 投資資金
例えば、投資資金が3000万円で、日経225先物の価格が38000円、建玉数4枚の場合は、
38,000円 X 1000 X 4枚 ÷ 3000万円 = 5.07倍
更に、下記の半年複利で10年間運用し、税金控除後収益は以下の計算式で算出されます。
(年間平均収益率 ÷ 2 ÷ 100 X レバレッジ X 0.8 + 1)^20
ちなみに、年複利で10年間運用し、税金控除後収益は以下の計算式となります。
(年間平均収益率 ÷ 100 X レバレッジ X 0.8 + 1)^10
さて、弊店のシステムでは半年複利で10年間運用した場合 に23.10倍(2024/5/1現在)になるというデータがあります。しかし、この計算には税金が加 味されていません。そこで、20%の税金(2037年までは復興税がかかるので20.315%)を加 味した上で、弊店の収益率ならば各レバレッジのとき何倍になるかというのが以下のデー タです。年間平均収益率ですが、34.49%(2024/5/1現在)で計算しています。
レバレッジ | 収益(単位:倍) |
1 | 13.1 |
2 | 128.5 |
3 | 995.9 |
4 | 6,379.2 |
5 | 34,892.6 |
6 | 167,063.1 |
いかがでしょうか?僅か3倍のレバレッジで995倍と いうのも凄いと思います。当初資金が1000万円であれば、10年後には99億円になる可能性 を示しています。但し、年間平均収益率通り運用できればという大前提がありますので、 この数値を信じて頂いては困ります。ここで申し上げたいのは、収益を重視 し過ぎて、過度なレバレッジをかけなくても十分な収益を上げられる可能性があると いうことです。
更に、ここで申し上げているのは想定元本に対してのレ バレッジです。日経225先物取引の最低限の証拠金で考えますと、ボラティリティの低いときではレバレッジは18倍位になります。
これまで、「1枚当りの必要証拠金」、「オプティマルf」、「リスク許容度」でご紹 介した建玉量には、ある重要な視点が欠落しています。それは市場の状況です。この場合、 ボラティリティという要素が極めて重要です。当然な がら、低ボラティリティ時には市場は穏やかに動きますので、万一の場合に備えたポジシ ョンにするべきでしょうか?暴落や暴騰は頻繁にある訳ではありません。そうすると、よ り現実的な対応はボラティリティの値によってポジション量を加減することではないでし ょうか?
まず、ボラティリティには過去の変動から算出するヒストリカル・ボラティリティと、 オプションの現在価格より逆算するインプライド・ボラティリティがありますが、この場 合はリアルタイムに反応するインプライド・ボラティリティが適していると思います。オ プション相場におけるインプライド・ボラティリティは多数存在し、どれを使用すべきか 迷ってしまいますが、(株)日本経済新聞社より、総合的な指数として 日経平均ボラティリティー・インデックス(以下、日経平均VI)が公表されていますので、 この日経平均VIを利用して計算致します。
次に、ボラティリティという概念を導入すると必然的に、投資期間という要素を考慮す る必要があります。何故なら、日経平均VIは1ヶ月でどの位変動しそうかを率で示した指標 だからです。弊店の場合、年平均約44回の売買があり、月単位ならば約3.65回の売買があ ることになり、そこで、日経平均VIを3.65で除すことと致します。
よって、ボラティリティを加味した建玉数は以下の計算式で算出されます。
投資資金 X リスク許容度 ÷ (日経225先物の価格 X 日経平均VI ÷ 3.65 X 1000円)
例えば、投資資金が3000万円で、日経225先物の価格が38000円、リスク許容度を30%、 日経平均VIが20%とすると
3000万円 X 30% ÷ (38,000円 X 20% ÷ 3.65 X 1000円) = 4.32枚
これまで、「1枚当りの必要証拠金」、「オプティマルf」、「リスク許容度」、「レ バレッジの効果」及び「インプライド・ボラティリティ」で、ご提示しましたデータはあ くまでも参考データです。それによってどのように建玉されるかは、お客さまの自由です。 ただ、最も重要なのは「リスク許容度」です。更に、投資資金も損益の 発生の都度変わっていきますし、日経225先物の価格も都度違いますので、新規に建玉され る際には改めてご計算ください。以下に投資資金とリスク許容度を入力すれば、上記計算 結果を出力しますので、ご参考にしてください。
尚、最大損失、日経平均VI(売買回数が月1回なら3倍、毎日なら3/20を掛けた数値に置 き換える)等を変更することにより、弊店以外のシステムの計算もできますので、やってみ てください。但し、最大損失は売買代金が1000万円になるように調整してください。
日経平均VIが15%以下に低下して来ると、下記表で最大建玉数がオプティマルfより日 経平均VIの方が多くなります。しかし、決してオプティマルfの建玉数より多 く建てないでください。寧ろ、このような状況では必要証拠金レベルに建玉数を下げるこ とをお奨め致します。何故なら、日経平均VIが15%以下となる状況を想定すれば、ご 理解いただけると思います。同状況は市場が凪の状態です。このようなときは市場が次の 相場へのエネルギーを貯めている状況で、新たな動きがあると、その方向に強いトレンド が発生する可能性が高いのです。しかも、その時は何の前触れもなく、突然やってきます。 従って、もし市場と逆の方向に大きなポジションがあると、一発で投資資金を失う可能性 があります。
【前提条件】 2024/11/21 現在
※計算されない場合はリスク許容度を変更してみてください。
尚、3.56枚のように端数が出ますが、小数点第一位の0.5の部分は日経225miniで調整することができます。