日経平均株価とは、東証1部上場銘柄の中から日本を代表する225銘柄で算出された株 価指数のことで、日本経済新聞社が公表しています。米国のダウ・ジョーンズ社が開発し たダウ平均株価の株価平均型方式を基にした計算方法で修正平均を算出します。業種のバ ランスなども考慮しながら、定期的に入替があります。株式分割、無償交付などの際は、 分母(除数)の修正などで連続性を保つようにしています。尚、配当落ちに関しては除数の 変更はありません。配当落ちも含めた過去からの連続のリターンは日経平均トータルリタ ーンとして公表されていて、2022/01/14時点では47,254.46です。参照の株価は市場価格を そのまま用いず、みなし50円額面に換算して計算していましたが、2021年の定期見直しよ り、株価換算係数を乗じて計算する様に改定されました。また、同時に入替は3銘柄迄に 限定されました。変更の主旨は、株価換算係数を原則1に設定しますが、採用する銘柄の 株価水準が著しく高い場合には、銘柄入替に伴う市場への影響を抑えるため、日経平均へ の組み入れ時のウエートが 1%以内となるよう 1 以外の値(0.1~0.9)を設定することにあ ります。計算式は以下のとおりです。
日経平均株価=(株価x株価換算係数)の単純平均/除数
将来的な話ですが、以下の表をご覧下さい。
銘柄 | みなし額面 | 株価換算係数 | 現在値 | みなし価格 | 影響度% |
東京エレクトロン | 50 | 1 | 65,220 | 65,220 | 8.17324 |
ファーストリテイリング | 50 | 1 | 63,910 | 63,910 | 8.00907 |
ソフトバンクグループ | 25/3 | 6 | 5,497 | 32,982 | 4.13324 |
ダイキン工業 | 50 | 1 | 25,300 | 25,300 | 3.17054 |
ソフトバンク | 50 | 1 | 1,447 | 1,447 | 0.18134 |
Zホールディングス | 125 | 0.4 | 616 | 246 | 0.03083 |
ソフトバンク系 | 34,675 | 4.34540 |
まず、現在値は2022/01/14の時価です。そして、日経平均に対して影響度が3%を超え ている4社及びソフトバンク関連会社のDataです。4社系の合計影響度は23.7%に及びます 。つまり、4社系の上下がかなりの部分で日経平均の上下を左右している訳です。一方で、 影響度0.1%未満の銘柄が84もあります。これで、日本を代表する指数と言えるのでしょう か?
まあ、日経平均が単純平均ですので、やむを得ないのですが、過去にこの問題が紛糾し た時期があり、その対応として、加重平均型の日経300が登場しました。しかし、残念なが ら、同指数は定着に至りませんでした。当時は同指数を後押しすべく、同指数関連の様々 な商品が上場されましたが、価格水準が日経平均とは大きく違う点や慣れ親しんだ日経平 均の方が分かり易い等々の理由、また察するに、日経平均を残してほしいという機関投資 家の強い意向等があったのではと思います。今では同指数は片隅に追いやられてしまいま した。
さて、話を戻しますと、1/225=0.444ですので、「日経平均への組み入れ時のウエート が 1%以内」とは日本経済新聞社が考えるあるべき姿、更に深読みすれば、2%以内が許容範 囲なのではないでしょうか?
弊店が考えるには、株価換算係数の導入は日本経済新聞社の深謀遠慮で、いずれ、影響 度が高過ぎる銘柄の係数を下げる布石なのでは、と思わずにはいられません。もしそうな れば、日経平均型のインデックスファンドには影響が甚大ですが、この問題は放置してお くと、ますます影響度の格差が広がるのではと思います。
日経225先物とは日経平均株価を対象とした先物取引で、将来の日経平均株価を株式の ように現在の市場価格で売買できます。但し、日経225先物では期限までに決済しない場 合は自動的に決済されて取引は終了します。
日経225先物には理論値が存在します。但し、その値はその瞬間のもので、日経平均価 格が変動すれば、それに従って理論値もまた変動します。計算式は以下のとおりです。
日経225先物の理論値 = 日経平均価格 x e(r-δ)T
e:自然対数の底この影響で、金利が0もしくは非常に低金利の場合、配当落ち前の3月限は6月限より配 当分だけ安くなるのが通常です。同様に、9月限と12月限も中間配当落ち前に9月限の方が 安くなります。
裁定取引を行う証券会社は、先物価格と現物価格の乖離に着目し、日経225先物の理論 値より先物価格が高ければ、先物売りの現物買い、日経225先物の理論値より先物価格が安 ければ、先物買いの現物売りを仕掛けます。その結果、サーキット・ブレーカーが発動さ れない限り、日経平均価格と日経225先物価格はリンクして動きます。
SQという制度は先物・オプション取引独特のものです。何故この制度が存在するのか と言えば、裁定取引業者のためなのです。裁定取引はローリスク・ローリターンの取引で すので、決済時に現物の価格と先物決済価格が一致している必要があります。そのための SQなのです。では、何故裁定取引業者を優遇するのかと言えば、まさに日経平均価格と 日経225先物価格がリンクして動くようにするためです。
ご参考までに以下の表ご覧下さい。
日付 | 1限月売残 | 1限月買残 | 2限月売残 | 2限月買残 |
1996/02/14 | 222 | 2,995,268 | 0 | 299,294 |
2022/01/12 | 9,206 | 165,520 | 0 | 0 |
これは、裁定取引の残高です。上段のDataは弊店が保有する最古の裁定残で、下段は最 近の裁定残です。残高があまりにも違います。その主な理由は取引所の処理能力の違いです。
日付 | 処理方法 | 注文応答時間 |
従来 | 場立ち | 不明 |
1996/12頃 | 99%コンピュータ化 | 不明 |
1999/05/06 | 完全コンピュータ化 | 2~3秒 |
2010/01/04 | arrowhead | 5ミリ秒 |
2015/09/24 | arrowhead2 | 0.5ミリ秒 |
ミリ秒とは1000分の1秒のことです。1996/02/14と言えば、まだ場立ちによる発注も行われ ていた時代。当時は裁定取引もまだ人手で発注されていたと思われます。その後、東証の 完全コンピュータ化により、裁定取引もコンピュータによるプログラム発注へと進化し、 現在に至ります。余談ですが、東証のコンピュータ化は1990/11より始まり、当初は約70% の銘柄がコンピュータ化されたと記憶しています。1999/05/06に100%に至った訳ですが、 4/30は場立ち最後の日として歴史に刻まれました。現在はarrowhead2のお陰で、裁定取引 も瞬時に処理される分、裁定取引をできる機会も減って裁定残が激減したと思われます。 ということは日経平均価格と日経225先物価格がリンクして動いている証でもあります。
日経225miniは2006/7/18より、日経225マイクロは2023/5/29より、日本取引所グループ において、取引が開始されております。日経225miniは日経225先物の10分の1の想定元本で 取引でき、日経225マイクロは100分の1の想定元本で取引できます。それ以外にやや制度に 違いがありますので、それらについてご説明いたします。
日経225先物 | 日経225mini | 日経225マイクロ | |
乗数 | 1000倍 | 100倍 | 10倍 |
呼値の単位 | 10円 | 5円 | 5円 |
限月取引 | 3月,6月,9月及び 12月の限月取引の 13限月取引制 | 3月,6月,9月及び12月の 2限月取引及びそれ以外の月の 直近3限月取引の16限月取引制 | 3月,6月,9月及び12月の 2限月取引及びそれ以外の月の 直近2限月取引の4限月取引制 |
日経225miniと日経225マイクロの限月取引の説明はややわかり難いのですが、要するに今 が4月後半だとすると日経225miniは5月、6月、7月、8月、9月の5限月が取引され、日経 225マイクロは5月、6月、7月、9月の4限月が取引されるということです。その場合、当然 5月、7月、8月の3限月についての最終決済はマイナーSQ で決済されます。
制度の違いはここまでですが、これが実際の取引にどう関わってくるかというと、シス テム運用投資顧問のシステムは日経225先物を想定して作られていますので、日経225先物 はSQでポジションが解消されているのに、日経225miniではポジションが残っているとい ったことが想起されます。そうした事態を避けるためにも日経225miniや日経 225マイクロで建玉される際は、極力3月,6月,9月及び12月の限月でお願いいたします。
日経225先物と比べ小口になってしまう分、手数料がやや割高になってしまうことは否 めません。特に日経225マイクロは日経225先物の最安値220円に対し、5倍です。日経 225miniなら2倍弱なので、気になる程高い訳ではありません。ネット証券各社の手数料を 調べましたので、ご参考にしてください。
証券会社 | 日経225先物 | 日経225mini | 日経225マイクロ |
松井証券 | 220円 | 38.5円 | 11円 |
auカブコム証券 | 275円 | 38.5円 | 11円 |
マネックス証券 | 275円 | 38.5円 | 11円 |
楽天証券 | 275円 | 38.5円 | 11円 |
SBI証券 | 220円~ | 27.5円~ | 11円 |
エイチ・エス証券 | 330円 | 44円 | なし |
岩井コスモ証券 | 275円 | 55円 | なし |
以前、2020/07/28に調べたDataを公開しておりましたが、2022/01/14に再調査しました。 基本的に殆ど変わっていないのですが、2020/07/28の日経平均は22657.38で2022/01/14では 28124.28です。記憶が定かではないのですが、現在の手数料水準は日経平均が15000円頃 に設定されたのではと思います。これは実質的には手数料の値下りを意味します。いずれ、 日経平均の価格が5万円位になれば、手数料の改定ということもあり得ます。1枚あたり何 円という定額ではなく、定率になるのではと思います。尤もネット証券の競争は激しいの で、手数料の改定は容易ではないでしょうが…
更に、今回日経225マイクロが加わったことで、再々調査しましたところ、日産証券、 GMOクリック証券、岡三オンライン証券、SBIネオトレード証券が姿を消しました。そして、 エイチ・エス証券や岩井コスモ証券は日経225マイクロを取扱わないようです。まあ、それ も一つの経営判断でしょう。ただ、日経225マイクロには新規の先物投資家を育成するとい う側面もあり、その点を無視して採算に合わないからと言って、一概に切り捨てていいの でしょうか?
以下は2019/08/14ののDataです。
日経225先物 | 日経225mini | |
2019/09限 | 123,974 | 1,419,141 |
2019/12限 | 25 | 56,098 |
規模において、日経225miniは日経225先物の1/10です。上記Dataは出来高ですので、正 確ではありませんが、売買代金でminiが先物を上回っています。2019/12限に至ってはminiが 先物を圧倒しています。
元々、miniは先物市場の補間のため上場されました。その頃のイメージとしては小口投 資家のための先物市場という感じでしたが、時を経て、大口投資家にも利用されるように なりました。
例えば、ある大口投資家が75.3枚の先物買を発注する必要がある場合、以前ですと、
日経225先物 75枚と、別々に発注していましたが、近年は
日経225先物 0枚というように、mini市場に一括して発注するケースが多いようです。
弊店は以前より、mini市場も口座開設をお願いしておりましたが、現状からすると、逆 にminiがメインで一応日経225先物も口座開設しておいてくださいと申し上げるべきかなと も思います。