主に主婦のお客さまが対象となると思われますが、年間130万円(60歳以上か障害者の方は180万円)以上の収入が発生した場合、扶養家族の基準から外れてしまいます。その場合概算で幾ら位の負担増になるかということですが、一般論で説明するとやや難解なので、具体例で説明していきます。本人のパートの所得が100万円に、本人の先物の所得が500万円となった場合を仮定します(復興特別所得税は加味していません)。
システム運用投資顧問のある松戸市の例で上記ケースを計算します。まず、総所得金額ですが、パートの所得100万円から給与所得控除65万円を差し引くと35万円、顧問料を引いた先物の所得464万円を合計すると499万円です。そこから基礎控除33万円を引くと466万円となります。
医療の項目は所得割が7.52%、均等割が1人19500円、平等割が18000円、資産割が0円なので以下のようになります。医療:466万円 X 7.52% + 19500円 +18000円 = 387,930円(10円未満切捨)
支援の項目は所得割が2.24%、均等割が1人6000円、平等割が0円、資産割が0円なので以下のようになります。支援:466万円 X 2.24% + 6000円 = 110,380円(10円未満切捨)
介護の項目は所得割が1.61%、均等割が1人12900円、平等割が0円、資産割が0円なので以下のようになります。介護:466万円 X 1.61% + 12900円 = 87,920円(10円未満切捨)
各自治体とも限度額が設定されていて、概ね医療が53万円、支援が13万円、介護が10万円のようです。介護は40~64歳の被保険者のみが負担します。40~64歳の場合ですと、先物の所得500万円に対して、顧問料と20%の税金を引いた金額が371.2万円で、そこから更に年金や健康保険を引きパートの所得100万円を足すと395.5万円位になってしまいます。年金は後で還って来るので必ずしもマイナスではないし、松戸市はかなり健康保険が高い方とのことですが、それにしても約95.5万円コストは馬鹿になりませんね。
松戸市の場合ですが、他の先物の所得金額の場合も試算しましたので、参考にしてください。先物所得 | パートの所得 | 顧問料 | 先物の税金 | 年金 | 医療 | 支援 | 介護 | 健康保険の合計 | 手取り(単位:万円) |
100 | 100 | 36 | 12.8 | 18.1 | 7.7 | 2.1 | 2.4 | 12.1 | 120.9 |
200 | 100 | 36 | 32.8 | 18.1 | 15.2 | 4.3 | 4.0 | 23.5 | 189.6 |
300 | 100 | 36 | 52.8 | 18.1 | 22.8 | 6.6 | 5.6 | 34.9 | 258.2 |
400 | 100 | 36 | 72.8 | 18.1 | 30.3 | 8.8 | 7.2 | 46.3 | 326.8 |
500 | 100 | 36 | 92.8 | 18.1 | 37.8 | 11.0 | 8.8 | 57.6 | 395.5 |
600 | 100 | 36 | 112.8 | 18.1 | 45.3 | 13.0 | 10.0 | 68.3 | 464.8 |
700 | 100 | 36 | 132.8 | 18.1 | 52.8 | 13.0 | 10.0 | 75.8 | 537.2 |
800 | 100 | 36 | 152.8 | 18.1 | 53.0 | 13.0 | 10.0 | 76.0 | 617.1 |
900 | 100 | 36 | 172.8 | 18.1 | 53.0 | 13.0 | 10.0 | 76.0 | 697.1 |
1000 | 100 | 36 | 192.8 | 18.1 | 53.0 | 13.0 | 10.0 | 76.0 | 777.1 |
余談ですが、健康保険の請求は世帯主に行きます。しかし、その支払いが配偶者の分であれば、配偶者の税控除(パートの所得等に対して控除可)に使えます。但しそれは総合課税の場合で、先物の利益については、申告分離課税なので国民健康保険税(料)で税金を安くすることはできません。
( 借 方 ) | ( 貸 方 ) | |||
K証券預け金 | 1000 | M銀行普通預金 | 1000 |
( 借 方 ) | ( 貸 方 ) | |||
先物取引差入証拠金 | 1000 | K証券預け金 | 1000 |
利益: | ( 借 方 ) | ( 貸 方 ) | ||
---|---|---|---|---|
K証券預け金 | 1050 | 先物取引差入証拠金 | 1000 | |
先物利益 | 50 |
損失: | ( 借 方 ) | ( 貸 方 ) | ||
---|---|---|---|---|
K証券預け金 | 950 | 先物取引差入証拠金 | 1000 | |
先物損失 | 50 |
評価益: | ( 借 方 ) | ( 貸 方 ) | ||
---|---|---|---|---|
先物取引差金 | 100 | 先物利益 | 100 |
評価損: | ( 借 方 ) | ( 貸 方 ) | ||
---|---|---|---|---|
先物損失 | 100 | 先物取引差金 | 100 |
利益>100: | ( 借 方 ) | ( 貸 方 ) | ||
---|---|---|---|---|
K証券預け金 | 1150 | 先物取引差入証拠金 | 1000 | |
先物取引差金 | 100 | |||
先物利益 | 50 |
利益<100: | ( 借 方 ) | ( 貸 方 ) | ||
---|---|---|---|---|
K証券預け金 | 1050 | 先物取引差入証拠金 | 1000 | |
先物利益 | 50 | 先物取引差金 | 100 |
損失>100: | ( 借 方 ) | ( 貸 方 ) | ||
---|---|---|---|---|
K証券預け金 | 850 | 先物取引差入証拠金 | 1000 | |
先物取引差金 | 100 | |||
先物損失 | 50 |
損失<100: | ( 借 方 ) | ( 貸 方 ) | ||
---|---|---|---|---|
K証券預け金 | 950 | 先物取引差入証拠金 | 1000 | |
先物取引差金 | 100 | 先物損失 | 50 |
( 借 方 ) | ( 貸 方 ) | |||
M銀行普通預金 | 1000 | K証券預け金 | 1000 |
中小企業のオーナーにとって、先物取引を行う場合、「個人と法人、どちらが得か?」という命題はかなり重要です。 そこで、あくまでも一般論ですが、どちらが得かの判断材料をご提供致します。
まず、復興特別税ですが、個人・法人ともに税額の2.1%となっています。
個人の場合、申告分離課税の内15%部分が国税です。法人の場合、法人税、地方法人税、特別法人事業税が国税ですが、 法人税についてみると、一般的なケースとして普通法人の場合、 資本金が1億円以下の場合は15%、1億円超の場合は23.20%となっています。 更に、利益が年800万円超の部分については23.20%となっています。
従って、法人税のみで税率の低い場合でも個人と同じですので、国税に関しては個人の方が有利です。
個人の場合、申告分離課税の内5%部分が地方税です。
法人の場合、少し複雑なので東京都のケースですが、以下の表をご参照ください。
税区分 | 都道府県民税 | 市町村民税 |
法人住民税 | 法人税割 | 法人税割 |
均等割 | 均等割 | |
法人事業税 | 所得割 | なし |
付加価値割 | ||
資本割 |
「XX割」という課税方式は外形標準課税と言われ、 法人税割と所得割以外は利益の有無に関わらず課税されます。 考え方としては一定の行政サービスを受けているので、 規模に応じてそのサービスの対価を払う義務が生じるというものです。
さて、法人住民税の法人税割について調べると都道府県民税が3.2%、市町村民税が9.7%となっています。 合計で12.9%の税率になります。 これは法人税額に対しての税率なので、過大なものではありません。 ですが、利益に対し法人税が15%の場合は約2%、23.20%の場合は約3%となります。 更に、法人事業税の所得割は軽減税率適用法人で最も税率が低い法人でも課税標準額に対し3.5%課税されます。 つまり最も税率が低い法人でも法人住民税の法人税割と法人事業税の所得割で約5.5%という税率となり、 外形標準課税の税額を調べる必要もなく、個人の税率を超えています。
従って、地方税に関しても個人の方が有利です。
個人の場合、繰越損失は3年しか認められません。 法人の場合、10年です。 従って、繰越損失に関しては法人の方が圧倒的に有利です。
個人の場合、投資顧問料の様な直接の因果関係がある経費以外は、基本認められません。 法人の場合、かなり広範囲に認められます。従って、経費に関しては法人の方がかなり有利です。
個人の場合、確定申告が必要ですが、手間としてはそれだけです。
法人の場合、まず、定款の変更が必要です。 恐らく99.9%の法人は定款に「先物取引を行うことがある」とは記述していないと思います。 本来の業務に無関係の先物取引については、はっきりと定款に記述していないと、 損失が発生した場合に株主代表訴訟を起こされるリスクが存在します。
次に、上記会計処理が必要で弊店の場合、年間30回位の売買がありますので、 この記帳の手間は馬鹿になりません。
従って、手間に関しては個人の方が有利です。
法人に大きな累積損失がある、若しくは恒常的に赤字の場合は、法人。 それ以外の場合は個人の方が有利と思われます。
これはあくまでも一般論ですので、例えば地方法人税率等は自治体によって差異がありますし、 業種によっては租税特別措置法による軽減税率があるかもしれません。 従って、税理士または会計士とよくご相談の上、決めて下さい。